プルースト『失われた時を求めて』と絵画

講師: 吉川一義 氏 (京都大学大学院文学研究科教授)
日時: 2011年 12月7日 (水) 16:30〜18:00
会場: 同志社大学京田辺キャンパス 嗣業館2F 第1会議室


 プルーストの長篇小説『失われた時を求めて』には、筋立ての重要な箇所にさまざまな絵画が重要な役割をになって登場する。スワンが好みのタイプでもないオデットに惚れるには、ボッティチェリの絵画が決定的な契機となる。作中の小説家ベルゴットは、晩年に見に出かけたオランダ絵画展で、フェルメールの『デルフトの眺望』を前に発作をおこして息絶える。主人公「私」のアルベルチーヌへの恋心の背後には、ヴェネツィア派のカルパッチョの画が想起される。今回の講演では、これら小説の場面を画の図版を参考にしながら読みすすめ、絵画がそれぞれの場面でどのような役割を果たしているかを考える。刊行中の『失われた時を求めて』の新訳(岩波文庫)も随時参照して、本作を読んだことのない人にはプルースト小説への案内となるようにしたい。

講師プロフィール

吉川 一義(よしかわ かずよし) 1948年大阪市生まれ。東京大学文学部、同大学院博士課程満期退学。パリ・ソルボンヌ大学文学博士。都立大学人文学部教授をへて京都大学文学研究科教授。専攻は近現代フランス文学。プルースト失われた時を求めて』の生成過程、絵画との関係などを専門とする。主な著作に『プルースト美術館』(筑摩書房)、『プルーストと絵画』(岩波書店)、『プルーストと絵画芸術』(仏文、シャンピヨン書店、2011年カブール=バルベック・プルースト文学サークル賞受賞)、『ディコ仏和辞典』(共編、白水社)、『プルースト書簡集総合索引』(仏文、共編、京大出版会)、翻訳にバレス『グレコ─トレドの秘密』(筑摩書房)、タディエ『評伝プルースト上下』(筑摩書房)などがある。2010年11月よりプルースト失われた時を求めて』の全訳を刊行中(岩波文庫)。2010年にプルースト研究によりアカデミー・フランセーズ(フランス学士院)より学術大賞「フランス語フランス文学顕揚賞」を受賞。


主催: 同志社大学言語文化教育研究センター
同志社大学言語文化学会 (Tel: 0774-65-7070)

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